Friday, January 29

怪盜山貓收視大好的分析

亀梨主演『怪盗 山猫』好調 「実は大人向け骨太作品」との評
NEWS ポストセブン 1月29日(金)16時0分配信

『怪盗 山猫』好調の秘密とは?
亀梨和也(29才)が神出鬼没の天才怪盗役で主演している『怪盗 山猫』(日本テレビ系)が好調だ。初回14.3%の高視聴率でスタートを切り、2回目は13.6%を記録。2回目の数字は今クールドラマの2回目視聴率ではトップとなった。これだけ支持を集める理由とは? テレビ解説者の木村隆志さんが人気の秘密に迫る

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『怪盗 山猫』は、「盗んで逃げる」ハラハラドキドキのアクションだけでなく、登場人物の生き様を描くヒューマン、謎めいた山猫のミステリーなどを盛り込んだ複合エンタメ作。さらに、「単なる金の亡者ではなく、一度もミスを犯すことなく悪人から大金を盗み、悪事の証拠だけを残して去る」という痛快なヒーロー要素を兼ね備えています



亀梨和也さん演じる主人公の山猫が、清濁併せ呑むキャラクターであるのも魅力のひとつお金を盗むくせに、悪人を許さない人をだまして利用するのに、心に響く言葉をぶつける無駄に高いテンションとチラチラ見せる暴力的な横顔、「武士道」へのこだわり、規格外の音痴なども含め、視聴者に「山猫は何者なんだろう?」と人物像をつかませません。勧善懲悪の作品が多い中、「“正義かどうか分からない主人公”が悪人をやっつける」という図式が異彩を放っています。

もうひとつの魅力は、シリアスな展開。土曜9時の同枠は、子どもと一緒に家族で見やすい作品が多い中、亀梨さんと広瀬すずさんがつかみ合って絶叫したり、仲間のメンバーを山猫が殺したのかと思わせたり、衝撃的なシーンがありました。「怪盗」という題材で子ども向けのように見せておきながら、実は大人向けの骨太な要素を持つ作品だったのです。

骨太さを持つ作風がなぜ生まれたのか? その理由はスタッフの経歴にヒントがあります。プロデューサーの福井雄太さんは、養護施設の描写などで物議を醸した『明日、ママがいない』、当時ほぼ無名の広瀬すずさんを大抜擢した『学校のカイダン』を手がけた人物。20代中盤で日本テレビ史上最年少プロデューサーに起用されただけあって、若さあふれる思い切ったドラマ作りをする人です。

また、脚本の武藤将吾さんは、激しさとゆるさの両面を持つ主人公を描くのが得意。『家族ゲーム』で櫻井翔さんが演じた吉本荒野がそうだったように、人間の弱さを鋭くえぐるような山猫のセリフは見応えがあります。1話では「誰も助けてくれなかった?誰もそばにいてくれなかった?違うだろ!お前が何も見ようとしなかっただけだ。大事なもんはそこかしこにあったんだよ」、2話では「自分のケツが拭けなかったら、誰かに拭いてもらうしかねえんだよ!そういう人間を一人でも多く作るしかねえんだよ!どうやって作るか知ってるか?『ありがとう』だよ」というセリフが印象的でした。

視聴者はシリアスとコミカルのバランスがいい作品を見ると、「見応えと見やすさの両方があるな」と感じるもの。『怪盗 山猫』の原作は見応えのある小説ですが、ドラマ版は漫画のような見やすさを加えることで、人気を得ているような気がします。成宮寛貴さん、佐々木蔵之介さん、北村有起哉さん、菜々緒さんら助演キャストも、個性的で存在感たっぷりなので、最後まで楽しませてくれるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。

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