KAT-TUN、『タメ旅』復活から感じる新たな成長物語の始まり 充電期間を経て一段上のレベルへ
5/13(日) 10:01配信 リアルサウンド
2015年4月から2016年3月までレギュラー放送されていたKAT-TUNの冠番組『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』(TBS系)が、この5月から『KAT-TUNの世界一タメになる旅!+』(以下、『プラス』と表記)となって復活した。異例の展開である。
“異例”と言うのは二つある。まずひとつは、今回の『プラス』が4月にスタートしたばかりの動画配信サービス・Paraviのオリジナルコンテンツだということである。たびたび話題になっているように、最近ジャニーズは続々と“ネット解禁”を打ち出している。昨年はネットドラマ『炎の転校生REBORN』(Netflix)でのジャニーズWESTの主演、海外ネットドラマ『フラーハウス』(Netflix)へのマリウス葉、Sexy Zoneのゲスト出演、さらにV6・岡田准一のLINE LIVE出演もあった。また今年に入るとネット上のタレント写真が条件付きながら解禁され、YouTubeでの「ジャニーズJr.チャンネル」の開設、KAT-TUNのファンクラブイベントや山下智久のTGC出演のLINE LIVE生中継があった。そして今回の『プラス』だが、ジャニーズのレギュラー冠バラエティ番組が動画配信されるのは史上初となる。昨年からの一連の“ネット解禁”の流れに新たな1ページを加えたかたちだ。
もうひとつ異例なのは、ジャニーズグループの冠番組が約2年余りのブランクを経て復活したことである。地上波テレビからネットへという変化はあったが、番組の内容自体はまったく変わっていない。こうしたケースは、あまり前例がないように思う。Paraviのサイトで田村恵里プロデューサーは、冗談っぽく「“奇跡”の復活」とコメントしているが、実際そう言っても大げさではないくらいレアなケースだろう。
ご存じのように、番組の中断には理由があった。メンバーの脱退を受けて3人がKAT-TUNの“充電”を決断し、2016年5月からグループ活動の一時休止に入ったからである。その後、今年2018年1月1日「ジャニーズカウントダウンコンサート 2017-2018」で再始動を発表するまで3人はそれぞれソロ活動に専念することになった。
亀梨和也は、『ボク、運命の人です。』『時代をつくった男 阿久悠物語』(いずれも日本テレビ系)、『FINAL CUT』(フジテレビ系)といったドラマの主演、『PとJK』(主演)『美しい星』といった映画への出演があり、俳優としての活動にますます脂がのってきた。また初のソロコンサートツアーが実現したことも忘れてはならないだろう。一方、野球を中心にしたスポーツキャスター業も相変わらず順調だ。そうしたときにもたびたび見せる細やかな気配りと頭の回転の速さは、今後MCの分野でも将来性を期待させる。
上田竜也の活躍も印象的だった。俳優として舞台『新世界ロマンオーケストラ』での主演、そして『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)出演を経て『新宿セブン』(テレビ東京系)では連続ドラマ初主演を果たす一方で、『オールスター感謝祭’16春』(TBS系)の「赤坂5丁目ミニマラソン」での優勝や『炎の体育会TV』(TBS系)の企画「上田ジャニーズ陸上部」など、持ち前の身体能力を生かしたバラエティでの活躍も目に付いた。そしてそうした番組のなかでKAT-TUNへの熱い思いがほとばしる場面もあって、それがまた彼の人間的魅力を伝えている。
中丸雄一は着実に仕事の幅を広げた。俳優として連続ドラマ『マッサージ探偵ジョー』(テレビ東京系)の主演、自ら構成・演出を務めるソロアクトライブ『中丸君の楽しい時間2』の8年ぶりの公演などの一方で、バラエティ番組への進出が目立つ。さまざまな企画に毎回挑戦する『シューイチ』のレギュラー出演はもちろん、『世界ルーツ探検隊』『天才キッズ全員集合~君ならデキる!!~』(いずれもテレビ朝日系)ではゴールデンタイムのバラエティでMCを務めた。どの番組でも誠実さのなかに天然なところがふと出ることがあり、いじられ役としても絶妙の存在感がある。
こうしてみても、彼らがそれぞれ“充電”中に見せた成長には目を見張るものがある。そこには常に、活動休止中のグループを必ず再始動させるという強い意思が感じられた。この間、2人ずつで共演する場面などもあったが、そうしたときにもグループへの思いが自然ににじみ出ていた。
『プラス』の初回にも、その成長ぶりははっきりと見て取れる。番組の復活を知らせるためサプライズで登場した「天の声」が、バラエティの勘が鈍ってしまっていないか心配して3人それぞれをおなじみのスタイルでいじり始める。すると彼らは「正解」を返すだけでなく、予想を上回る見事な返しで「天の声」を喜ばせる場面もあった。地上波時代の『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』にはまだバラエティ慣れしていないKAT-TUNの成長物語の側面があったが、“充電”期間を経てそれがこの『プラス』では一段上のレベルで続いていくことを予感させた。
そこには、地上波時代に培った3人とスタッフの信頼関係も垣間見える。田口淳之介の脱退発表があったのは『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』がまだ放送中のことだったが、その後も4人での出演は続いた。それだけでなく、脱退が番組中にネタとして堂々と話題にされる場面さえあった。その点この番組は、ドキュメンタリー的要素を含むKAT-TUNの成長物語でもあったのだ。
『プラス』の初回配信でも、メンバーの人数を確認する番組お約束の「点呼ネタ」が繰り広げられている。そのようなくだりを遠慮なくやれること自体がスタッフとKAT-TUNの信頼関係の証だろう。言い方を換えれば、それだけこの番組は、KAT-TUNという成長物語にとって特別なものになっているのである。その物語のなかにはファンもいる。いや、むしろファンの存在はそこに絶対に欠かせないものだ。地上波時代の最終回、ヘリコプターに乗った3人に向けてファンたちが地上からメッセージの書かれたパネルを掲げた。そこにあったのは「KAT-TUN 充電だよね?」「放電するなよ!!」の文字。それを目にした3人は、「放電しねえよ!!」「絶対戻ってくるぞ!!」と口々に叫んでいた。
そしてその約束は果たされた。だから今回、『プラス』の最初の旅の行先をどこにするかファンに委ねられたのも、地上波時代からの物語の続きという観点から見れば必然だったと言えるだろう。場所は3人が再始動のライブを行っている東京ドーム。再び登場した「天の声」から改めて番組復活がファンに告げられ、さらに「ファンに決めてもらいたい大事なこと」としてファンの拍手で旅の行先が決定された。それはまさに、KAT-TUNの新しい成長物語の始まりにふさわしい演出であった。
太田省一
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